ボクの事、忘れないでね。
こんなお天気のいい日に、こんなウールのいかにも冬物の帽子が登場するなんて、どういうこと?しかも、寒々しい冬の風景の中で、落し物のような風情の淋しげなチェックのクロッシェ。
この帽子は、クロッシェなるモノを初めて自分で型紙から起こして作った帽子。これが出来たとき、「私は天才だ!」って思うくらい感動したし、嬉しかったよ。とってもベーシックな形だったけれど、単に生地の柄が良かったという理由で、周囲の人たちにも評判良かったんだ。
単純な私は、「これからの人生、帽子と共に生きよう!」なんて真剣に思ったりして、「何処に行くのでもこの帽子を被りたい!」と思ったし、この帽子を被っていると人生の目標が出来たみたいな気分になって、すこぶるご機嫌だったような気がする。
私と帽子との出会いは、恋愛に似ている。いや、恋愛そのものかも。
あれから、私の帽子製作熱は冷めることなく、今も私の中でジンジンと音を立ててはいるけれど、帽子との関係は、非日常から、ほぼ日常へと変化して来ているみたい。
いつでも傍にいて触っていないと安心できなというドキドキ感とウズウズ感が連続する恋愛初期から、手を伸ばせばいつでも触れることが出来るという安心感から、「ちょっとだけ後回しにしてもいいよね」って油断が顔を出す恋愛第二期。安心感なんて、そんなの幻想なのにね(^^;)
GWは帽子作りに専念するぞ!と心に誓ったはずなのに、お天気がいいとついつい外で遊んでしまう私は、暗くなると反省する。そんな時、急にこの帽子のことを思い出したんだ。
そして、「ボクの事、忘れないでね。」って、チェックの帽子は呟いた。
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