知らなかった!手放した服がたどる旅 ・リサイクル工場見学レポート

2025年7月末、unisteps主催「手放した服のゆくえを学ぶフィールドトリップ」に参加してきました。
訪れたのは、衣服や繊維を回収し、リサイクルから再商品化、販売までを担っている ナカノ株式会社 の エコムナ横浜工場

「着なくなった服がどんな道をたどるのか?」を、実際の現場で知ることができる貴重な体験をレポートします!



★まずは繊維リサイクルの歴史から

リサイクルは最近の取り組みと思いがちですが、実は日本では明治の近代化と共に“産業”としてスタートしていたそうです。
当時は綿を中心に、

  • 製紙向け
  • ウエス(油取りなどに使う布)
  • 反毛(わたに戻す技術)

この3つが柱。
戦前・戦中は軍需、戦後は重工業向けに発展していきました。

その後、

  • 1950年頃:化学繊維の登場、大量生産の時代へ
  • 1970年頃:「モノ余り」で古着が海外に流れ、ごみ問題化
  • 2010年頃:未選別輸出業者が現れ、回収モラル低下
  • 2020年頃:不要衣料が年間約80万トン! うち70%が廃棄(環境省2022調べ)

現在、リサイクルに回っているのは全体の15%に満たない…という厳しい現状があります。


★回収と工場での仕分けの様子

服の回収方法は「行政」「集団回収」「店頭」などがありますが、最も効率がいいのは行政による地域ごみ回収。

ナカノさんは神奈川を中心に回収した衣料を受け入れています。
上の写真は、回収されて入荷した資源ごみの袋の山


作業の流れはこのように進みます。

  1. 入荷:1日0~30トン!季節や天候に左右される
  2. 選別:毎日10トン分をなんと260種類に分類
  3. 第1選別:家庭用繊維製品と衣料に分ける。冬物は反毛へ
  4. 第2選別:上衣・ズボン・子供服など形で仕分け
  5. 第3選別:さらに素材・色・性別などを見極め、古着かウエスへ
  6. 梱包:国内外に向けて圧縮し出荷

※「反毛(はんもう)」とは、古着や糸くずをわたの状態に戻すリサイクル技術の事。
※「ウエス」とは、古着や布切れなどを裁断して作られた、汚れや油をふき取る為の使い捨て雑巾の事。


資源ごみ回収袋から出してざっくりと仕分け。
リユース可能そうな服はベルトコンベアに載せて2階に



2回に上がると…
実は写真NGだった仕分けがここで!
古着屋さんの目利きさんがずらりと並んで、眼光鋭く欲しい洋服を選んでいました👀

古着屋さんが選ばなかった残りの服を、仕分けスタッフさんが素材・色・形などごとに仕分け、それぞれの仕分け箱に入れていきます。
さっと触って一瞬での判断、職人技です。

2階の仕分けが終わって選ばれなかったものが1階に落とされて、

山積みになっていきます。今の季節は回収される衣類や繊維自体が少ないとのこと。
多いときは天井近くまで山積みになるそうです。


リユースとして再び着られる服は全体の約半分。そのうち43%が海外へ、4%が国内で流通。
ただし輸出先の多くは暑い国。
カシミヤなど高級素材でも、ニーズがほとんどないというのは想定外でした。

↓写真は取締役の藤田さんが、仕分けの仕方を説明してくれているところ。
カラフルな色の服は南国で人気、
ボタンがついているのでリユースできるかも、
ファーの付いた冬物は反毛の材料行き…などなど


★ナカノさんならではの挑戦

ナカノさんは 特殊な紡績技術 を持っていて、短繊維から再び糸や生地を作ることが可能です。
その発想から「軍手は白い綿」という固定概念を覆し、ウールやカシミヤ入りの軍手を商品化。
これが大ヒットしたのだそうです。

実際の見た目も触った感じも、軍手にはもったいない程のクオリティーで
日常使いしたいくらい!

生産工程の動画はこちら↓
https://www.nakano-inter.co.jp/movie/index.html?utm_source=chatgpt.com

まさに「リサイクルを商品として届ける」会社。
これからの新しい展開にも期待が高まります。


★今直面している課題

工場の方が強調されていたのは、素材の複雑化がリサイクルを難しくしているということ。

  • 複合素材が増え、単一素材は減少
  • 高度化した素材は見分けがつきにくい
  • 着心地や扱いやすさを求めた素材開発と、リサイクルのしやすさは両立しにくい

だからこそ、

  • 単一素材製品の見直し
  • 素材表示の明確化
  • 法規制の整備
  • そして私たち消費者の意識のアップデート

が必要とのことでした。


★ここでちょっと、ごみ出しの注意点

ちょっとした意識でリサイクル率は変わるそうです。

  • 濡れた衣服はNG(廃棄になる)
  • 雨の日はなるべく避ける(濡れてしまう可能性大)
  • リユースの可能性がある古着として出すときは、ボタンなどはそのままで

知っているだけで、服の“第二の人生”が広がりますね。

自治体によっては衣料の資源回収をしていないところもあるそうです。
ナカノさんでは、そんな方のために古着を受け入れてくれるそうですよ。

ナカノ株式会社/古着の出し方相談コーナー
https://www.nakano-inter.co.jp/oldclothes/index.html


★見学を終えて

私自身、複合素材の生地を面白がって使ってきた立場として、考えさせられることが多い体験でした。

一緒に参加した、オシャレ大好きで、サスティナブルファッションについてもすご~く勉強しているTちゃんの一言が忘れられません。

「知れば知るほど、どうすればいいかわからなくなる!!」

でも、だからといって「知らなくてもいい」訳ではないのです。
まずは知ることから!
そこから、それぞれが出来ることを考えていけばいいのだと思うのです!


ナカノ株式会社の取り組みについて興味のある方はこちらもぜひ ↓
https://www.nakano-inter.co.jp/index.html

投稿者プロフィール

かとうひろみ
かとうひろみ
北鎌倉とスナフキンが大好きな帽子屋です。