富士山よ、あなたには誰も敵わない!
帽子も被らずにお財布だけ持って外に出た。
ゴミ捨てに行くときでさえ、帽子を被る私なのに。
よっぽどその場にじっとしていられない何かがあったのだろうか・・・?
冷たい空気の中、どんどん歩いて近くのコンビニまで行った。
思いっきり体に悪そうなものが食べたくなって、
探したけれど大したものはない。
今時は、みんな健全な商品ばかりになってしまって、
舌が真っ赤に染まるようなゼリーとか、
人口甘味料だらけのジュースとか、
油が酸化してしまったような鱈の乾き物だとか、
猫肉かも?と噂の立つようなソーセージとかは売っていない。
しょうがない。
思いっきり体に悪そうなものから、ぐーんと妥協して
昔ながらのカップラーメンを手に取った。
ささやかな抵抗?行き場のない逆襲?儀式としての鎮静剤?
思いっきり体に悪いものが何故欲しいのか
自分にもわからない。
ついでに占いの本も一緒に会計を済ます。
帰り道、カップラーメンと占いの本が入ったビニール袋を片手に、
まっすぐ前だけ見ながら、とことこ歩く。
家を出る直前、
思いもかけない内容の手紙を手にしたその時は、
なんにも感じずにへらへらしていた私。
とことこ歩いているうちに、どす黒く濁った液体のようなものが
私の体の中でじわじわと広がっていくのを感じていた。
あぁ、その為に私は、思いっきり体に悪いものを欲していたのか・・・。
マイナスをマイナスで打ち消すために。
体はよく知っているのだ。
頭や心に聞くまでもなく・・・。
とことこ歩いて、そして家の前の坂をぐんぐん上る。
視界が開けたその場所で、
夕日をバックにした真っ黒な富士山が目の中に飛び込んできた。
美しい傾斜に続く頂を、真っ黒い歪んだ帽子のような雲が覆っている。
その美しいと言うよりも、激しい程の強烈さに釘付けになっていると、
どんどん帽子型の雲は小さくなって、最後には富士山のシルエットだけが
美しく清清しくオレンジ色に染まった空に残されていた。
そしていつの間にか、私も頬を緩め、体の力も抜けていた。
家を出るときの私は、
目には見えないけれど歪んだどす黒い帽子を被っていたに違いない。
でも、富士山がすっかり払いのけてくれたよ。
ありがとう、富士山!
そして、私の手元にはカップラーメンと占いの本だけが残った。
思いっきり体に悪いものじゃなくって、よかった~(^^)
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“富士山よ、あなたには誰も敵わない!”へ1件のコメント
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そんなに、急いでコンビニに体に悪い物を買いに飛び出たなんて…大丈夫!?
綺麗な富士山が見られて良かったね…!
ちなみに、今日のお月様もとっても綺麗だよ!空気が澄んでいて空も綺麗だから…ちょっぴり神秘的だし…心癒されます!
手に残った物が『カップラーメンと占いの本』かぁ~
良い占いが出ますように!