聞こえなくても伝わること。


「朗読会」といったら耳で聞くことが前提だと思っていた私。しかし今回の「帽子の朗読会」、スタッフの半分が聾唖の方たちで、実を言うと不思議であり、ほんとに成り立つのか疑問でもあった。


ところが、会が終わって打ち上げの席、そんなことはどうでもよくなっていた。


満面の笑みを浮かべてビールジョッキ片手に『お疲れさま~!』


 


 


 


手話と口話で会話を操る人たちは、その場の空気を読み、お互いの表情や動きに細心の注意を払い、濃密なコミュニケーションを図っていく。相手に対していい加減な気持ちでいたら、相手にも自分にも何も伝わらないから、どんな会話をするときでも真剣に相手と向かい合う。


その分他者と自分との境界線がはっきりしていて、他者と関わるONとOFFが見事なくらいはっきりしている。ちゃんと『これから、私はあなたに話しますよ~!』とアピールしないと、全く気づいてもらえない事だってある。


 


実は今回、彼女たちとの距離が急速に縮まった!と感じる瞬間があったのだ。


それは、朗読会が終わって彼女たちが私の作った不思議な形の帽子を順番に被り、満面の笑みをたたえ楽しそうにはしゃいでいる姿をこの目にした時。


手話の全く出来ない私には、事務的な会話はなんとか出来ても、どう雑談すればいいのか、どうきっかけを作ればいいのか分からない。でも、彼女たちのその笑顔は私を自然体にさせてくれた。


打ち上げの宴もたけなわ、ちょっぴりお酒の力も入って飛び出した『ちゃんと伝わっているのか不安で、どう話しかけていいか分からないのよ。』というぶしつけな私の感想にも『私たちだって同じだよ~。』とストレートに返ってくる。心地よい会話のキャッチボール!


 


 


 


いつだったか、あるコンサートに行った聾唖の方が、耳では聞こえないけれど、目で、皮膚で、体全体でバイブレーションを感じ、歌い手のメッセージが伝わってきて涙が流れたという話を聞いたことがある。きっと朗読も一緒なんだよ!ここにいるメンバーは、そんな舞台を目指しているんだろうね、きっと!


 


写真は朗読者の「り・すなさん」そして「はじめさん」。


不思議な帽子、お似合いです(^^)