移りゆく景色を見つめていたのは・・・。

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開いているお店がポツポツとしかない商店街。地方に

行くと、そんな寂しい空気漂うシャッターモールによく行

き当たる。賑やかに活気あふれる商店街を歩くのも好

きだけれど、そんな時間が止まってしまったようなモー

ルを歩くのも嫌いじゃない。

嫌いなどころか「寂しいねぇ・・・」などと言いながら、人

の行き来もまばらになったその商店街を、端から端ま

でゆっくりと歩くのが実は好きだったりする。

 

夏の初め、連れ合いの実家がある長野に行ったとき

のこと。2泊しかしないのだから荷物はほとんどないは

ずなのに何だかすごい荷物の量。しかし、ご両親用に

と創ったブレード帽子をお渡しすれば、帰りの荷物は

キャリーひとつにまとまってラクラクのはずだった。

 

ところが、長野に着いてふと降り立ったバス停近くのシ

ョッピングモール、そこで出会ってしまったのだ!

 

その昔ながらの屋根付商店街は、シャッターモールと

までは言わないが、古い商店はどんどん閉じて新しい

テナントがぼちぼち入り始めた感じの、まだ再生しきれ

ていないモールだった。新しく出来たラーメン屋さんが

やけに派手派手しく感じて、あまり楽しめそうな商店街

ではないなぁと思ったもののプラプラと歩き始めると、

閉店セール中の帽子屋さんを発見!時代の波につい

ていけなかった感たっぷりの品揃えとディスプレイ、昔

ながらの帽子屋さんである。

 

店内を見渡し、ふと目に付いた深めの帽子を何気なく

持ち上げると、その下に隠れていたつぶらな瞳の男の

子のシャポースタンドが現れたのである!

あぁ、一目惚れ!出会ってしまったのだ!

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もちろん閉店セールの商品として並んでいた訳ではな

いけれど、これから行く宛もないというその子を引き取

りたいと、ドキドキしながら懇願して、とうとう鎌倉まで

連れ帰ってしまったのだ。行き以上に荷物がかさばっ

て重くなったって、全くもって気にならない。

なにせ一目惚れだもの、恋の力とでもいうべきか!

 

この男の子、胸に「東京ハット」とロゴが入っている。

「東京ハット」と言えば、舶来山高帽の国産化を目指し

た日本初の老舗製帽会社、東京帽子株式会社のこと

である。1892年に渋沢栄一の肝いりでスタートしたと

いう、日本に帽子文化広まりし日の歴史的製帽会社。

今はオーベクス株式会社と社名を変え、帽子も扱われ

てはいないとの事。寂しい限りである。

 

ほこりにまみれて黒ずんでいたこの男の子は、帽子屋の

盛期から衰退期、そして閉店までの経過をずっとその

目で見てきたのだろうか・・・?


せめてこれからは、帽子が楽しく創られ喜んで被られ

ていくさまを見せてあげられるといいなぁ・・・、このアト

リエで(^^)