ピュアへの憧れ
最近白い生地を手に取ることが増えてきた。白と一口で言っても、生地の素材や織り方、そして縫い方で表情が違ってくる。綿菓子のようなハンチング、繭玉のようなキャスケット、そしてマシュマロのようなベレー・・・etc.
あの方にもこの方にも白い帽子を創りたくてウズウズしてしまうのだ。
それだけ“白=ピュア”なイメージの方との出会いが増えているという事かしら?そうだとしたら嬉しいなぁ。私もそのピュアさにあやかれるかも知れないから(^^)
白という色で思い出すのは、ダライラマから渡された白いストール。残念ながらストールを渡されたのは私ではないが、その場に居合わせた私はそのストールの輝くばかりの白さにうっとりしていた。
1999年のロンドンでの事。イギリス人の友人と2人で道に迷った時、近くの工事現場で車座になってランチをしていたグループに道を聞こうと声を掛けた。その中の背の高い少し東洋顔をした青年が立ち上がって、丁寧に道を教えてくれた。なんて美しい人なんだろうと見上げていた私の眼は、ちょっと潤んでかもしれない。道の説明を終えると彼は私の眼を見て、「君は日本人?」と日本語で聞いたのだ。思わず「え?」と聞き返してしまったが、彼は微笑むと「僕の母は日本人なんだ。日本には行った事はないけれどね」との事。色々話しているうちに、工事をしているのが「Imperial War Museum(帝国戦争博物館)」の庭「Peace Garden(ピースガーデン)」であること、10日後にはオープニングセレモニーがあって、そこにはダライラマもいらっしゃることを教えてくれたのである。
もう、私はいてもたってもいられない。何かの縁に違いない!はるばるロンドンまで来ていながら、日本の血を受け継いだ美しい青年に導かれた“ダライラマに会えるチャンス”をみすみす逃す手はないではないか!それからの数日間、私はあちこちに電話をかけ、あちこちに出かけ、そしてセレモニーに参加できるチャンスを手に入れた。あの時、私の英語力はグーンと伸びたに違いない。いや伸びたのはコミュニケーション力、はたまた自己主張力、もっと言うと願望達成力というべきか。
当日、たくさんの人に押されるうちに私は花道の横に立っていた。そしてなんと、花道を通るダライラマの差し出された手に触れる事が出来たのだ。そう、あの誰をも幸せな気持ちにさせる笑顔と共に!
セレモニーでは、ダライラマからこの「Peace Garden」を作る事に従事したスタッフに、ねぎらいの言葉とあの白いストールがひとりずつ首に掛けられていった。チベットでは白は神聖な色であり、神聖な労働に従事した者には白い色のストールが与えられるという。
セレモニーが終わって、私はあの美しい青年を人ごみの中から見つけて声を掛けた。誇らしげに白いストールをはためかせながら、彼は微笑んだ。そして隣に居る彼女を片手で抱き寄せながら私に紹介してくれた時、輝きが増して眩しかったのはその白いマフラーだったのか、それとも2人の姿だったのか・・・。
私は、セレモニーの最後にダライラマの撒いた米粒を数粒拾って持ち帰った。甲子園の砂ならぬ、ピースガーデンに撒かれた米粒。この色もまた、神聖な「白」だった。
そしてその時私は、少女のようにピュアな気持ちだったに違いない。
・・・って事にしておこっと(^^;)
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“ピュアへの憧れ”へ2件のコメント
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ピュアか~、う~ん、あらためて身にしみる単語ですよね;;;
でも、ひろりんさんの笑顔も、、、ピュアですよん^^(にこって、目尻が下がる感じがキュート&ピュアな気持ちにさせられますよん!)♪
そして、すごい!ある意味歴史的ワンシーンに遭遇していた訳ですね。
きっかけも含めてとても素敵な思い出ですね、、。
日々の生活の中でもささいな事でもらえる感動ってありますけど、旅、しかも他国においての感動的なワンシーン、視覚、聴覚、すべてにおいてあぁ~~~って(言葉にできない;;;)受ける思いって大きいですよね、、、。
ステキなお話聞けちゃった!
ピュアなもの(者、物、いろいろ~)を
ピュアな気持ちと目で見られる、感じられる人でいたいですよね~;;;
わ~い!ありがとう~!またね!
(変なコメントになっちまった;!?)
こんばんはー。今夜は再度登場です。▼白い帽子、憧れますよね。ワイドブリムハットにフレアースカートでエレガントかつセンシュアルに、というのもいいし、パナマ帽っぽい帽子をパンツスタイルやきりりとしたスカートに合わせるのもまたいたずらっぽい表情や小粋な空気が演出できたりして、まさに万能、と云うより全能!ですよね。……あ、いかん、オーダーしたくなってきてしまった……その前にもすこしダイエットして、きりりとした『白』に似合う自分にならなくては!▼そしてそんな『白』に出会うきっかけが、ダライ・ラマとの出会いだったとは……なんだか読んでいる方も感無量です。正直、うらやましいです。ああわたしも、ダライ・ラマにお目通りは叶わなくとも、せめてぐるりと世界一周してみたい!そしていろいろな風景に出逢い、またいろいろな人に出逢いたい!です。▼素敵な帽子と素敵な文章をありがとうございました。ではではまた!