いつかまた会える
私の帽子を愛してくれたあの方の突然の訃報に、哀し
みを感じる間もなくお別れのための身支度を急ぐ。
きちんとした喪服を持ち合わせていない私は手持ちの
黒い服をかき集め、頭には黒い帽子を被って家を出た。
この黒い帽子、数日前に完成したばかりのもの。小さく
なったベレーのヘッドサイズ部分を伸ばし、ボアの生
地で作ったバイヤステープと壊れたブーツの飾りベル
トでトリミングした、リメイクもの。ベレーとトークの中間
のような形が気に入って、色々なシーンで活躍しそうな
帽子が出来たと自画自賛していたとはいえ、まさか哀
しみの席がデビューになるとは思ってもいなかった。
西洋の映画では、教会やレストランの中などでも帽子
を被ったままの女性の姿があたりまえなように、基本
的に女性はどのようなときでも帽子を取らなくても良い
という。つばが広すぎて周りの人の邪魔になるような
場合は別として。しかし、このマナーはあくまでも西洋
のもの。帽子の歴史が浅い日本人に浸透しているとは
言いがたい。
結局私は式の最中には帽子を脱いだけれど、帽子好
きのあの方は私が帽子を被ったままでいても咎めるこ
とはなかっただろう。ただ、和を尊ぶ方たちが多い今回
の式で、波風立てなくても良いだろうと判断したから脱
いだまでのこと。大切な方とのお別れの席で、無駄に
人々の神経を逆なでするようなことはしたくなかっただ
けである。
頭の小さかったあの方の帽子は、この世に残されても
行き場がないと、主と一緒に棺の中に収められた。
いつも被ってくださった私が創ったハンチング。
天国でも被ってくれるだろうか。
* * * * * * * * * * * * *
あの方と私、並んでお散歩している姿がふと浮かぶ。
頭にはもちろん2人とも帽子。
なんだか、いつかまた会える気がしてきた・・・!
投稿者プロフィール
最新の投稿
- お知らせ2024年11月7日《お薦めイベント》着替えよう!あなた(の価値観)に似合う服
- お知らせ2024年10月31日11月のOPEN予定
- お知らせ2024年10月29日帽子も衣替えの季節/麦わら帽子のしまい方
- お知らせ2024年9月27日ラジオ音源お聴き頂けます♪『誰もかぶっていないものを被ろう!』