悲しみの席での帽子
『被ると思わず笑顔かこぼれるHIRORIN-BOW』
悲しみの席で女性が被るブラックフォーマルハットも例外ではありません。…と書くと驚かれる方も多いことでしょう。
しかし私の想いは
『大切な方の笑顔が心の中に甦る』
…そんな帽子であってほしいとの願いです。
とはいえ、喪の席でのマナーは色々あり、帽子を被ることに関してのマナーやその解釈も様々。立場や出席する場所、地域によっても違ってきますし、時代と共にその解釈も変化しています。
一般的に、女性が帽子を被るのは正式喪服、準喪服までで、顔を隠すように下げるベールは遺族及びカトリック信者のみ着けるのがマナーとされています。形はつばのない、艶消しの黒い生地を使用したもので、被るときは黒手袋がセットになります。(肌の露出を控えるためですが、手を合わせたりご焼香の際には外します。)
親族以外の参列者は、略式礼服になるので帽子は被らないのが一般的のようです。帽子は格を表すことになるので、参列者の立場で遺族や親族より格が上がりすぎないことが被るかどうかの判断基準になるのです。
特に日本では、このような席での帽子着用に抵抗のある方がまだ居られることを考慮することも大切なマナーのひとつでしょう。
私の父が亡くなった時、私はまだ帽子創りを始める前だったということもあり、その席で帽子を被るということはしませんでした。しかし、華やかでおしゃれを楽しんだ父が喜ぶような気がして、父の好きだったワインカラーの靴を履きました。
列席してくださった方の中には、そのことに気づいた方もいらっしゃいましたが、私はその靴を選んだことで、大切な父とのお別れの場を、私の中で印象深く色付けすることが出来たと思っています。
しかし、私の靴がワインカラーだったことをとがめる人がいなかったのは、私が亡くなった父の娘だという立場も大きく影響していることでしょう。
現在の私は、悲しみの席でも心落ち着けるために黒のベレー帽を被ることが多いのですが、これもいつも帽子を被っている帽子屋ということで許されているのかもしれません。
いずれにせよ、お別れする方を悼み、その家族の方の悲しみを推し量る気持ちさえあれば、マナーを超えて、おのずとその装いも決まってくると、私は思います。
先日完成した慶弔用の小さなフォーマルハットは、ハレの日だけでなく悲しみの席でも着けれるようにというご依頼でした。艶消しのブラックフォーマル生地に上質なレースとチュール、コサージュを付けて一見控えめとはいえ、ゴージャスなデザインに仕上げました。ハレの日には、スワロフスキーのカットガラス「レッドマグマ」のピンブローチを刺して華やかに演出することもできます。
出来れば「レッドマグマ」の出番が多いことを祈りつつ、慶びの日も悲しみの日も寄り添うお守りのような存在になってくれればとの想いを込めて…。
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