帽子は私の言葉です。


「話のきっかけの作り方」とか「初対面で相手を引きつける方法」とか、本屋さんに行くとその類の本をすぐ手にとってしまう。でもそんな本を読んでも、実際に人に会った時それが存分に生かされたと実感した事はあまりない。かえって萎縮したり、不気味なオーラを含んだ笑顔になったり、平均的で優等生的な自分しか表現できず、後で落ち込む事だっていっぱいある。


 


英語もろくに出来ないのにロンドンに住んでた時、私は小さなスケッチブックにボールペンで何やらよく描いていた。お花のスケッチだったり、会った人の後姿だったり、カフェで出されたマグカップだったり・・・etc. そんな私に、好奇心旺盛な人たちは顔を近づけ何やら話しかけてくれる。それに返す言葉を探すより、スケッチブックを開いて差し出すことの方が多かった。その方が、その人たちとの距離がぐっと近づくことを肌で感じていたから。


 



誰かの紹介でもなく、只私の帽子を見て、お任せで帽子を創って欲しいと言って下さる方が時々いらっしゃる。なんて勇気のあるチャレンジャーなんだろう?!とびっくりすることしきり。でも、その方たちは、私の帽子の中に、言葉には表せない何かを感じ取ってくれているらしい。私自身に対してもしかり。多分第六感。感覚が合うか合わないか。これって、どう言葉や態度で繕っても繕いきれるものではないから。


 


幸か不幸か言葉が通じてしまうこの国では、言葉に頼ったコミュニケーションをついついしてしまう。でも、言葉の通じない異国で、スケッチが私にとっての一番のコミュニケーションツールであったように、今の私には帽子が「私の言葉」そのものなのかもしれない。


 



マニュアル頼みのコミュニケーションは、もう卒業しよう。


自分のままでいることが、私を受け入れてくれる人を引き寄せる事になるのだから。


そして、私にとっては帽子がその手助けをしてくれるのだから。


ありがとう、帽子君!

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  1. 石井良佳 より:

    ここまでひとつのことに
    のめりこめて
    そしてそれが自分をあらわす手段になりえることに感動さえ覚えます。
    どうやってここにたどり着いたのか
    これからどんな風に発展していくのか楽しみでなりません。

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