オカンとディズニーランド

ディズニーランド


   


 


 


 


 


 


 


どんなに忙しくても今やっておきたいことがある。


 


クリスマスイルミネーションが始まったディズニーランドに行く事。


友達から譲り受けた日にち指定のペア券だけど、降って沸いたようなお楽しみに、どんなに忙しくてもその日だけは空けようと、連れと約束したんだもの!


 


 


実は10日程前、図書館からリリー・フランキーの『東京タワー』がやっと私の手元にやって来た。なんと半年くらい前にウェイテリングリストに登録しておいた本だ。凄い人気!すっかり頼んだ事も忘れていたのに、先日テレビでドラマ化されたのを観て堪能した次の日、「本がご用意できました」と連絡が来る。なんとも間の抜けたお話。でもとりあえず借りてみたものの、手も付けられずに日にちだけが過ぎていく。もう読む時間はないだろうけれど、そのまま返すのももったいないような気がして、それならと、ドラマも観ていないという母に「人気の本だよ。」と無理やり押し付ける。


 


ところがである!


母はこの本を一晩で読み終わってしまったのだ。それは、内容や文体にどんどん引き込まれたのと同時に、私に読ませたいという想いがふくらんで、一気に読むことになったのだという。明日ディズニーランドに行くために、仕事に切りを付けておこうと思いつつ、一向にはかどらないでちょっとイライラしている私に向かって、「忙しいとは思うけど、読むんだったら今日のご飯は私が作ってご馳走するわよ。それまでの時間まず読みなさいよ。」とまで言われた日にゃぁ、断る理由はないと観念した。そして、「ご飯」に釣られた私は『東京タワー』を一気に読むことになるのだが、本に出てくる「料理好きのオカン」と母がダブってしょうがない。


 


 


そんな『東京タワー』を読んでる最中、ディズニーランドに一緒に行くはずだった連れから、どうしても行けなくなったと連絡が入る。がっかりするよりも早く、私の心は迷わず母を誘おうと決まっていた。「初めてなのよ、ディズニーランド!」と、急な誘いにもかかわらず案外母も嬉しそう。


 


そう、そしてディズニーランド当日。


母と私はクリスマスイルミネーションやジャングルクルーズを楽しみ、エレクトリカルパレードに眼を輝かせる。あんまり人が多いから迷子にならないように思わず手をつないで歩く母と私。40過ぎた娘とその母。なんだか『東京タワー』の母娘バージョンみたいだなと思いつつ、私は心から楽しんでいた。喜んでいた。そしてホッとしていた。


 


どんなに忙しくても、今やっておきたいこと・・・、それは母と過ごすこと。


そう、『東京タワー』と『ディズニーランド』が思い出させてくれたこと。


ありがとう。


 


 


写真のベレーとハンチングの持ち主とは、


お互いの母親についてもしみじみ話したことがあったっけ。


彼らはもう『東京タワー』を読んだのかしら?