人生はブレードミシン


ブレードミシンによる作品人生、自分の意思ではどうにもならないことがあるものだ。


 


自分の置かれた状況の中で、降りかかる事件や危機をかわしながら、人生の流れを読んで、流れに乗って生きるのが賢い生き方と言えるだろう。とは言え、人生の流れに逆流し、渦中に飛び込み、無駄だと思われる悪あがきをするのも、時に必要なことなのかも知れない。例えそれが、自分の意思とは全く関係なかったとしても。その悪あがきの中、自分の身の丈を思い知らされたり、気持ちにケリつけたりすることで、次へのステージに進むための準備が出来るのかもしれない。成瀬巳喜男監督が昭和31年に撮ったモノクロ映画「流れる」を観て、そんな事を思ったりした。


 


それにしても田中絹代演じる芸者置屋の女中のなんと控えめながら光っていることよ。私がもっとずっと若い頃にこの映画を観ていたら、少しは賢く生きる術を身に付けていたかもしれないなぁ、などとちょっと残念な気持ちになったりもした。いや、今からでも遅くはないか・・・! 


 


おっと、今日はこんな難しい話をするつもりは全くなかった。書きたかったのは、最近初めて体験したブレードミシンを使って創った帽子の話だ。


 


ブレードとはリボン状になったもののこと。素材は麻だったりウールだったり化繊だったり。とにかくそのひも状になったブレードをクルクル円状になるように巻いて、隣り合ったブレードの端をひたすら縫い合わせて形を創るのがブレードの帽子。麦わら帽子やストローハットなどもその仲間だ。


 


今回初挑戦したのは、上糸だけでチェーンステッチのように縫えるブレードミシンという特殊なミシンだ。このミシン、ブレードの引っ張り加減ひとつで立体の曲線が決まるのだが、全く持って自分の思い通りに形を創ることができないのである。よっぽどの熟練した職人さんでないと、同じ形状のものは2度とできないであろう。その代わり、自分の意思ではどうにもならない分、思ってもみない面白い形が出来上がることがある。


 


写真に写ったワインカラーをした蟻塚かムーミン谷のミーの頭のような形のものは、実はベレー帽になるはずだった、当初の計画では・・・。生成り色したタコチューか巨大なカマキリの巣のような形のものは、実はセーラーハットになるはずだった・・・。


 


どちらも、最初はあがいてあがいて何度もやり直して、なんとも情けない時間を浪費した。しかし、私の意図とは関係なく、生き物が成長するかのように出来上がっていく形が面白いと感じたとたん、自分の肩の力が抜けて、ちょっとだけではあるがミシンの動きをコントロールすることが出来るようになっのだ。そしてこの際、この不思議な形を面白がって作品にしてしまおう!という事で、とりあえず形にしてみることに。


 


仮装パーティーの衣装になるのか、ランプシェードの笠になるのか、はたまたすっかりお蔵入りになってしまうのか、今後のこの作品たちの行方は未定だが、肩の力を抜くことと流れに身を任せることを教えてくれたブレードミシン。こりゃあ、人生といっしょですなぁ。

人生はブレードミシン”へ1件のコメント

  1. honeybluemoon より:

    お久しぶりですぅー。お元気そうで何より!わたしも3月になったとあって、帽子のぽんぽんをくるみボタンに取り替えて春仕様にしてお出かけしましたよ。♪。▼ワイン色の帽子の方、今日が雛祭りだからってわけじゃないけども、なんだかお内裏様の帽子にも見えませんか?(前々からそう思ってみてました……)生成り色の方も、服装を工夫すれば面白いものになりそう!▼とまれひろりんさんがブレードミシンの使い方ーをマスターしたら、麦わら帽もオーダーできるのねふふふ……と、今から楽しみにしております。ではではまた!

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